フランスお菓子の旅ディジョン編カシシーヌ
ディジョンは、マスタードで有名な街です。日本でもよく見かけることができるマイユの本店がこの町にあります。そしてもう一つ有名なのが、カシスです。私もお菓子に使うカシスのお酒「クレームドカシス」の瓶を改めて見てみるとディジョンの(de Dijon)クレームドカシスと書いてありました。このカシスを使ったお菓子としてカシシーヌというお菓子を見つけました。外から見るとカシスのゼリー(パート・ド・フリュイ)のようですが、食べてみると中心に、カシスの濃厚なジュースが隠れていました。まさにカシスそのものを味わっているようなお菓子です。これは生徒さん達に食べさせてあげたいなーと思わせてくれるお菓子との出会いがありました。
今月のお教室では、皆さんに1粒ずつ召し上がっていただいていますが、お砂糖がしっかり入っているはずなのに甘過ぎずフルーツそのものの味を感じることができると好評でした。まだの方、お楽しみに!
フランスお菓子の旅ボーヌ編グジェール
ワイン好きの人ならば、ボーヌという町の名前は聞いたことがあるかもしれません。ボーヌの街は、城壁で囲まれた小さな小さな町です。その周囲には、有名なワイン畑がたくさんあります。また美味しいレストランやお惣菜屋さん・お菓子屋さん・もちろんワイン屋さんなどが商店街にあって、暮らしやすそうな町です。また毎週土曜日に開かれるマルシェはさまざまなものがそろっていて、見て歩くだけでわくわくします。
ここでは、今月のお教室で、生徒さんたちと作っているグジェールというワインのおつまみがあります。一見シュークリームのようですが、実は中には何も入っていません。その代わり生地にたくさんのグリエールチーズが混ぜ込んであり口に入れるとチーズの香りがして、止まらなくなってしまいます。ワインの町ボーヌでは、アミューズブッシェとして、レストランで出されました。またワインのティスティングのお口直しにもぴったりです。
フランス地方菓子の旅リヨン編クッサン・ド・リヨン

フランスには、リヨンに限らずその土地土地で、昔から作られているお菓子が必ずあります。食の都と言われるリヨンにももちろんあります。今回旅をして初めて出合ったクッサン・ド・リヨンもその一つです。
緑色の四角いお菓子がそうです。この形何かに似ていませんか?クッサンというのは、クッションのこと。つまりリヨンのクッションという名のお菓子です。外側の緑色の部分は、マジパンでできています。中心はチョコレートです。お酒がきいていておいいしい名物です。
リヨンには、フルビエールという名の丘があり、そこには、教会としては、珍しいのですが、聖処女(聖母マリア)が祀られています。そこからは、リヨンの街が一望できます。
このお菓子の物語は、その丘に祀られたマリア様に関係しています。1643年にリヨンは疫病に見舞われ、その病から市民を救ってくれたならば、3.5kgのロウソクと金貨1枚を絹のクッションに乗せて礼拝行列を送ると聖母マリアに祈祷したそうです。それ以来、リヨンの行政官たちは、昔の誓いを引き継ぎ祈願成就を告げる大砲3発の音とともに毎年フルヴィエールに出向いているそうです。この物語からインスピレーションうけ、ソワイユウ家が、絹のクッションをかたどった箱を考案したそうです。そしてチョコレート職人だったヴォアザン家が、このお菓子を考案し、出来上がったのが、クッサン・ド・リヨンです。
写真は、そのヴォアザン家のお店です。そんなに由緒正しきお店とも知らず、クッサンドリヨンがたくさん飾られていたので思わず写真を撮りました。こんなお話しを知った上でいただくとますますおいしく感じられなすね。
店内には、ちょうど復活祭の時期と重なったこともあり卵やニワトリたちの形をしたチョコレートが、たくさんありました。季節や行事にまつわるお菓子が生活の中に根づいているリヨンの人たちの暮らしを垣間見た気がします。
真っ赤なプラリネそしてもう1つ、リヨンのお菓子屋さん・パン屋さんには、赤い色をしたお菓子やパンが並んでいます。これは、アーモンドに、真っ赤に着色されたお砂糖をまぶしたプラリネでそこかしこに見ることができます。これだけでもポリポリといただけるのですが、それだけでなくブリオッシュやクロワッサンに混ぜ込んで焼いたり、これをタルトの中に入れたりクッキーのような、クロケ・オ・ザマンドの中に入れたりと、とにかく何でもこの真っ赤なプラリネが入っているのです。

リヨンでは、本当にたくさんのお菓子たちとの出会いがありました。さて、この後、ボーヌへとお菓子の旅は続きます。お楽しみに!
タルトとトルテは違うの? はい、語源は一緒ですが、時代とともに分かれてきました。
タルトは、皆さんよくご存じの今も私たちが見ることのできるビスケットの生地の中に詰め物をするものです。
たとえばアンズのタルトや栗のタルトなどたくさんありますよね。
では、トルテはというとスポンジ状の生地にジャムやクリームを挟んだもののようです。歴史は古くもともとこのような分類はされていなかったのですが、16世紀くらいからタルトとトルテに分かれてきたようです。
このタルトとトルテのお話をするときに必ず作る私の大好きな伝統菓子があります。それはオーストリアのリンツという都市の銘菓
リンツァートルテまたは
タルトリンツァーというお菓子です。このお菓子は、タルトとトルテの分岐点になったお菓子といわれています。生地は、バターとアーモンドやノワゼットなどの木の実の粉がたっぷり入ったビスケット生地で、半分の生地をタルトの型に敷き詰め、その上にフランボワのジャムをたっぷり塗り広げ、残りの生地は、上から格子状に絞り出してしっかりと焼きます。焼きあがると不思議なことに、敷き詰めた生地はしっとりしていて、スポンジに近い食感がするのですが、上に絞り出したところは、カリカリとしてまるでビスケットのような食感に出来上がるのです。初めて友人のところへ焼いて持って行ったときに友人が、「手が込んだお菓子ね。下の生地と上の生地と2種類の違う生地で作ってあるのね。」と言ってくれたのです。とてもうれしかったのを覚えています。

いつしか、時とともに卵を泡だてて作るジェノワーズに代表される軽い生地が作られるようになりジャムを挟んで作られるお菓子をトルテというようになったようです。そのためなのか、今でもトルテといわれるお菓子には、あんずジャムなどが間に挟んでつくるものもいくつかあります。これもリンツァートルテからの名残りなのかしらと思ってます。
ですが、リンツァートルテは今も伝統菓子としてウィーンやアルザスでは当たり前のようにお菓子屋さんで、買うことができます。お菓子の変遷を感じさせてくれる大好きなお菓子の一つです。
イタリアから来たサヴァイヨンサヴァイヨンというお菓子をご存知ですか?お菓子といってもデザートのソースとしていただくことが多いので、あまり知られていないかもしれません。
ラルースガストロノミークというフランスのお料理辞典によれば、白ワインと卵黄・砂糖を材料として作られるムース状のクリームの一種と書かれています。材料を混ぜ合わせ、湯煎で、ゆっくり卵黄に火を通していきます。見た目はババロアにも似ていますが、口に入れるとワインの香りのするちょっと大人のデザートといったところでしょうか。
このお菓子、実はイタリア生まれなのです。有名なイタリアの大富豪メディチ家のお嬢さんカトリーヌがフランスのアンリ2世のところへお嫁入りの際、数々のお料理や食材やお菓子も料理人とともにやってきました。昔は、こういった国同士の政略結婚がよく行われ、それとともに食文化の交流も行われました。
カトリーヌが結婚する以前からアンリ2世には、年上の美しい愛人がいました。アンリ2世は41歳で亡くなるときまで、この女性を愛していました。カトリーヌにまつわるお菓子を作るとき、愛されたくても愛されない女性の切ない思いがふっと頭をよぎります。

ちょっと切ないサヴァイヨンあなたも作ってみませんか?