スタニスラス王とお菓子たち今月は、皆さんとロレーヌ地方のお菓子たちをご一緒に作りながら楽しんでいます。ロレーヌ地方を一時期治めていたスタニスラス王は、美味しいものや、美しい建築やデザインにとても興味を持っていた王様でした。
ですから、ロレーヌ地方のナンシーという町は、その当時流行っていたロココ調の装飾を施した建築が多く残っています。また、お菓子とのつながりもとても深い王様で、皆さんご存知のマドレーヌも王様の厨房から生まれたとか・・・。その関係かは、わかりませんが、マドレーヌのレシピを買い取ったのは、ロレーヌ地方のコメルシーという町のお菓子屋さんだったため、今でもマドレーヌ・ド・コメルシー(コメルシーのマドレーヌ)と言われます。今回は、以前コメルシーを訪ねた折に食べた、ミラベルというこの地方の果物を一粒入れて焼かれたマドレーヌを再現してみました。

そしてババなるお菓子もこの王様が名付け親だったようです。どうしてこんな名前を付けなのかですって?これは、もともと王様が大好きだったアルザス地方のクグロフというお菓子が、硬くなってしまったので、ラム酒をかけて食べてみたら美味しかったので、名前を付けることになりました。そこで、王様は、その時読んでいたアラビアンナイトの中に出てくる物語の主人公アリババの名前からとったといわれています。今はアリが取れてババという名前で呼ばれるのが一般的ですが、パリのストレーというお店では、アリババという名前で売られていたと思います。このストレーさんは、スタニスラス王のもとで、お菓子を学んだ方のようですよ。
クイニーアマン今年4月から、ヨーロッパ地方菓子コースということで、地図を見ながらそれぞれの地方に伝わる伝統菓子を作ってみる講座をしています。
ブルターニュといえばクレープで有名ですが、最近は、日本でも本格的なクレープリーができてきました。クレープといってもそば粉で作ったものがブルターニュの特徴です。土地がやせていて小麦や葡萄が育たなかったこの土地の大切な作物だったそばを主食とし、葡萄の代わりにリンゴを植え、リンゴから作ったシードルという微発泡酒を飲んでいたのだそうです。そういえば、クレープリーには、シードルがつきものです。初めてフランスでクレープリーに入ったとき、シードルを注文するとガラスのコップと陶器の小さなボールが出てきました。ガラスのコップにシードルを注ごうとするとおじさんが、ノン!といってボールで飲むものだと叱られてしまいました。これが文化なんですね。郷に入っては郷に従えですね。
クレープのお話をしましたが、お教室でご紹介したのは、クイニーアマン・ガトーブルトン・キャラメルサレの3品です。この地方のお菓子の特徴は、塩味をきかせること。ブルターニュは、ゲランドでとれるお塩が有名なんですよ。
クイニーアマンは、ブルターニュで、一番古くからあるお菓子のようです。クイニーアマンとは、お砂糖のお菓子という意味なのだそうです。有塩バターとお塩・お砂糖もたっぷり使って作ります。
エステルハージーシュニッテン
ウィーンには、本当に美味しいお菓子がたくさんあります。これも、ハプスブル家が力を持ち、広大な領土を統治していたことに関係しています。もちろん、代々の王妃王様が、おいしいものに目がなかったことも大きな原因の一つではあると思っているのですが・・・
このエステルハージーシュニッテンも実は、ハプスブルグ家の統治下にあったハンガリーのお菓子です。
エステルハージーとは、ハプスブルグ家に次ぐ大貴族の名前です。ケーキの表面の矢羽根模様が、エステルハージー家を表しているのだそうです。あの、エリザベート妃もハンガリーが好きで、よく出かけ、エステルハージー家の晩餐にも招かれたようです。エリザベートも口にしていたかもしれませんね。
ノワゼットのメレンゲを薄く焼き、キルシュ風味のバタークリームを塗り6層に重ねてできています。
決して軽いお菓子ではありませんが、しっかりとした、おいしいお菓子です。こういったお菓子をお教室の皆さんと作るとそのお菓子の背景となる歴史や文化を感じることができ、とても心豊かになります。
お菓子ってすごいんですよ。
ちなみにシュニッテンとは、切り菓子の意味なので、あらかじめ1切れずつ切ってお皿にのせます。
日本ではあまり見かけませんが、ウィーンやハンガリーにお出かけの折は、ぜひ召し上がってみて下さい。
ペ・ド・ノンヌこれ、日本語に訳すとちょっとはしたないんですけど・・・
PetはおならNonneは、尼さんつまりその・・・尼さんのおならです!
シューの生地を焼かないで、油で揚げちゃったお菓子のことなんです。ベニエという揚げ菓子の1つなのですが、
なんともお菓子の名前としてはいかがなものかと思うのですが、
これもユーモアなのでしょう。ちなみにラルースガストロミークによるとスピール(ため息)・ド・ノンヌ 尼さんのため息とも呼ぶそうですよ。
修道院の尼さんが、誤ってシュー生地を油の中に落としてしまったのがきっかけだったとか・・・
シュー生地を油の中に落とすとプーと膨れる様子から名前がついたのではないかと
推察しています。
あなたも自分で作って、その膨れる様子をご覧になってください。

写真は、丸だけでなくいろいろな形に揚げてみました。